2015年5月28日
第 1 回 白馬経済法律セミナー
テーマ「民法(債権関係)改正について」
目次
消滅時効
法定利率
契約解除
危険負担
錯誤
売買契約
請負契約
消費貸借契約
賃貸借契約
【1】消滅時効
1 起算点と時効期間
主観的起算点の導入
現行民法(以下,「旧法」という)
消滅時効は,権利を行使することができる時から進行し(166条1項)
債権は,10年間行使しないときは,消滅する(167条1項)
⇒
改正法案(以下,「新法」という)
債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき,又は, 権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年間行使しないときは, 時効によって消滅する(166条1項) |
上記改正に伴い、商事消滅時効(商法522条,3年間)は廃止
また,短期消滅時効(民法170~174条)は廃止
新法は,客観的起算点に関する従来の理解を変更するものではない。
現行民法の客観的起算点は,単に権利行使の法的障害事由がないというだけでなく,債権者が現実に権利行使を期待できるか(期待可能性)を取り込んで判断されている。
主観的起算点は,「権利の発生原因」を知るだけでは足りない。
旧法724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
中間試案「債権の発生原因と債務者を知った時」
新法
「債権を行使することができることを知った時」(166条1項) |
人身損害の特例
生命身体の損害賠償請求権の消滅時効
新法
債務不履行に基づく場合も客観的起算点から20年(167条) 不法行為に基づく場合,損害・加害者を知った時から5年(724条の2) |
不法行為による損害賠償請求権
民法724条の「不法行為の時から20年」の定めにつき、従来除斥期間と解されていた(判例)が,時効期間であることを明示した。
2 時効障害事由
(1)更新と完成の猶予
旧法の時効中断と時効停止を,時効の更新と完成の猶予に再構成する。
新法の時効障害事由
時効の更新(旧法の時効中断) 今まで経過した時効期間の時計の針をゼロにもどす 完成の猶予(旧法の時効停止) 今まで経過した時効期間の時計の針を止めて、 一時的に時効期間の進行をストップする |
時効障害事由を,裁判上の請求等,強制執行等,仮差押え等,承認,催告,天災等,協議と類型的に整理
「裁判上の請求等」裁判上の請求,支払督促,即決和解,調停,法的倒産手続への参加
これらの手続の申立をすれば,手続が終了するまで時効の 完成が猶予され,かつ,終了してから6か月間は時効が 完成しない(新法147条1項)。 それらが確定判決等により権利が確定した時は,「更新」事由と なり時効期間が再スタートする(同条2項)。
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「承認」
旧法同様「時効の更新」事由となり,その時から新たな時効 期間が開始する(新法152条)。 |
「天災等」
権利行使を行うことができない障害事由が消滅した時から3か月間は時効が完成しない(161条) 催告期間中の再度の催告は,完成猶予事由に当たらない(150条2項)。 |
(2)協議による完成の猶予
当事者間で権利をめぐる争いについて協議を行う旨を書面で合意したときは,合意の時から1年間時効は完成しない(151条)。 1年内の期間を定めた合意もできる。 1年を超える合意は1年の限度で効力を有する。 合意の更新もできる。 債務者が協議の続行を拒否したときは,その通知から6か月間は時効が完成しない。 |