平成27年8月28日(金)
常習累犯窃盗を重く処罰する盗犯等防止法3条の違憲性をあらそう事件の第1審判決公判がありました。
大阪地裁は、同法を合憲と判断しました。適用違憲の主張も受け入れられませんでした。
弁護側は、常習累犯窃盗が窃盗の累犯(刑法235条、59条等)に比して加重処罰されることについて、
(1)常習累犯窃盗では、窃盗罪にある罰金刑がなく、懲役刑のみ法定されている。
しかし、事案によっては、刑務所で改善教育をほどこす施設内処遇が不可欠とはいえない。
本件のように、罰金刑により社会復帰させるべき場合があるのに、その規定を欠くことが相当でない。
(2)施設内処遇である懲役の法定刑の範囲が、窃盗累犯では1月~20年であるのに、
常習累犯窃盗では3年以上の有期懲役となる。
そのため、本件のように2千円程度の万引きでも、3年以上の懲役となってしまう。
スタートが1月から3年に一気に高くなる点は、合理的区別とはいえない。
上記2点は、合理的理由なく不均衡なまでに重すぎるので、不合理な差別として憲法14条1項に違反する。
また、31条が保障する「罪刑の均衡」原則に反し、憲法31条に違反する。
として、常習累犯窃盗重罰の法律としての制度設計を問題にしていました。
これに対して、大阪地裁は、判決の理由で、
常習累犯窃盗は、「常習性の発現と認められる窃盗罪を包括して処罰する」趣旨であること、要件も加重されていること等を理由として、憲法14条1項、31条に反しない
と述べています。
第1審合憲判決は、形式論に終始し、事案の検討が表面的であり、刑罰論に対する考察が不十分であるといわざるを得ません。
弁護人は、被告人と協議のうえ、即日、大阪高等裁判所に控訴しました。
同判決は、法令の憲法違反という重要問題をふくむことから、判例雑誌や判例データベースに搭載されることになっています。
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