「パワー・ハラスメントの防止について
平成29年11月2日 於大阪合同庁舎2号館 別館7階
弁護士 吉 岡 稔 浩
(大阪弁護士会 労働問題特別委員会委員)
1. パワー・ハラスメントとは?【HB1~2p.】
「①同じ職場で働く者に対して、
②職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、
③業務の適正な範囲を超えて、
④精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」
業務上、指示・指導・注意・命令は必要。
正当な指示等と「パワハラ」の区別は、
客観的に ③「業務の適正な範囲を超える」かどうか。
「パワハラ」は職場の戦力をうしない、業務を停滞させてしまう。
かといって、「パワハラ」になることを恐れて必要な指導を怠れば、
業務の円滑が妨げられるし、管理責任の問題ともなりうる。
2.パワハラの原因
① 加害者の無知・無自覚
【HB32p.行為類型,21p.~, 19~20p.】
② 人権尊重・人格尊重という意識の欠如
③ 職場の特性・風土・文化
④ 研修・防止体制の欠如
被害者の性格や職務上の失敗はパワハラを正当化しない!
3.パワハラによる弊害
① 被害者の被害(精神的・身体的苦痛)
② 職場環境の悪化
③ 業績の悪化
④ 業務目的の不達成
⑤パワハラによる責任
加害者個人が刑事責任や民事上の不法行為責任または懲戒責任等を負うだけでなく、
使用者も債務不履行責任や使用者責任・国家賠償責任(職場環境配慮義務違反)を
負うことになります。
4.パワハラの防止
① パワハラとは何かを知り,意識すること
② 人権尊重・人格尊重という意識
③ 職場の特性・風土・文化
④ 研修・防止体制の構築
5.パワハラ対策(時系列に沿って)
(1)未然防止が最も望ましい【HB6~8p.】
職場の風通しをよくする
職場のメンバーの個性を理解し,人の痛みに敏感になる
声かけ
(2)指導とパワハラの違いの理解【HB5p.・動画1~4】
パワーハラスメントととらえられる指導 |
パワーハラスメントにならない指導 |
① 身体的暴力 ②大声で罵倒する、机を叩くなどの威嚇的な行為 ③大勢の前で注意する(内容による) ④長時間立たせるなど身体的苦痛を与える ⑤不適切な言葉、表現 ア.身体的に危険を感じさせるような発言 イ.雇用を脅かすような発言 ウ.人格を傷つけるような発言 |
① 感情的にならない。深呼吸して間を置く。 ② 別室に移動して、一対一で。 ③ 当面の業務,問題のみに限定する。 ④ 何が悪かったのか、その理由を説明。 ⑤ 人格や性格を否定しない。 ⑥ 相手に対する信頼・期待を一言添えて伝える。 ⑦ 必要な指導を短時間行う。 ⑧ 部下にどのように伝わったか確認する。
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相手に対する信頼・期待を一言添えて伝える。
必要な指導が終わったら、すぐに移動して業務にもどる。
(3)早期発見
業務管理 だれがだれとどのような業務を担当しているか?(責任・分担)
進捗状況はどうか? 意見・方針の対立は? 成績は?
労務管理 出欠状況、残業、休日出勤、欠勤・遅刻の理由の把握
被害者・加害者となりそうな人の声を聴く
「進捗状況はどう?」「期日に間に合いそう?」
「〇〇さんの仕事ぶりはどう?」「〇〇さんは協力してくれている?」
業務上又は人間関係のストレス、職場での不満等を探り出す
(4)発生後の対応【動画5・6】
正確な事実確認 被害者・加害者・第三者から
被害者からの聞き取り 不満の吐き出し > 事実関係の確認
時間をかける 回数を分ける 心情への配慮が不可欠
秘密を守る
聞き取りは聞き取りに徹する 指導・注意その他処分は追ってする
事実と評価・心情等を区別
担当者も1人で抱えこまない 上司や他の担当部署等に情報提供・相談
人権・人格の尊重と職場環境配慮(改善)義務を意識する!