平成30年5月11日(金)
比較的アクセス数の多い「刑の一部の執行猶予」という記事に付言しておく。
刑の一部の執行猶予(刑法27条の2)を欲しい時、何を主張立証すればよいか?
刑の一部の執行猶予の①必要性・②相当性、である。
ここでは、本人の旺盛な更生意欲が不可欠である。
なぜ早期に社会復帰させるべきなのか、具体的にアピールしたい。
薬物事犯の場合は、刑の一部執行猶予中、必ず保護観察がつく(薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律4条1項)ので、
③保護観察適合性、まで主張立証する。
被告人質問で「一部執行猶予になれば、月1回は保護観察所にかよって尿検査を受けますが、きちんと受けますね?」と聞いておく。
刑の一部執行猶予を求めるときは、情状証人として執行猶予中の監督者を呼ぶ必要がある。
監督者が「仕事が忙しいから」と言っても、「監督します」という上申書で済ませることはできない。
弁護人が作って署名だけさせたかも知れない上申書では、裁判所から見て、監督の実効性の心証が得られないからである。
これは、一審でも控訴審でも同じである。
なお、情状証人に立った被告人の身内が法廷で頼りなさげなケースもあるが、被告人が「家族を法廷に立たせて申し訳ない」と強く更生をちかうこともあるので、悪いことばかりではない。
ともかく監督してくれそうな人が存在するということが大切だ。
薬物累犯のときは、検察官が強く「一部執行猶予不相当=全部実刑相当」の主張をすることがある。
そのような場合も、薬物累犯の特別法があるので、一部執行猶予は取れる。
しかし、検察官が、情状証人に「あなたは前刑の裁判でも監督を誓ったのに、どうして再犯を防げなかったのですか?」と攻撃するなど、一部執行猶予阻止をはかるので、十分な準備をしておく必要がある。
一部執行猶予がつかないときでも、裁判所が裁定未決勾留日数を多くつけてくれるケースもある。
上記①~③を意識して主張(弁論)・立証すると、裁判所が一部執行猶予をつける判断をしやすい。
なお、③保護観察適合性は、本来(条文上は)、②相当性の一部。念のため。
全部実刑を主張する検察官が「保護観察適合性を欠く」と主張してくることもあり、一部執行猶予を取る上でそれだけ重要性が高い。