精神鑑定

平成29年6月1日(木)

 

刑事裁判で精神鑑定を請求し責任能力を争った(鑑定請求書の見本はこちら)。

責任能力の有無については、いわゆる7つの着眼点を簡易化した考え方が用いられた。

 

7つの着眼点とは、

1 動機の了解可能性/不能性

2 犯行の計画性/突発性/偶発性/衝動性

3 行為の意味・性質、反道徳性、違法性の認識

4 精神障害による免責可能性の認識

5 元来ないし平素の人格に対する犯行の異質性・親和性

6 犯行の一貫性・合目的性/非一貫性・非合目的性

7 犯行後の自己防御・危機回避的行動

である(参考:岡田幸之「責任能力判断の構造と着眼点ー8ステップと7つの着眼点ー」2013精神経誌115巻10号1064-1070pp.)。

 

上記は、上掲岡田論文も指摘しているように、網羅的ではない、各項目の重要度は事例により異なる、各項目間で重なることもある、などに留意する必要がある。

公判活動とりわけ弁論では、7つの着眼点に沿った事実の整理と評価が課題となる。

さらに、情状も争うとなれば、責任能力とは別に情状についても十分なプレゼンテーションが必要となる。情状は、責任能力と重なる面もあるが、重ならない部分も大きいからだ。

 

公判は一部の報道でも取り上げられた。

初公判や判決日などは傍聴席が満席であった。

弁護側の重要証人の尋問日は傍聴人が比較的少なかったので、証人が話しやすかったかも知れない。

それと、被告人の受容と社会復帰という面で「修復的司法」ととらえうる展開になったのではないかと思っている。

 

判決では、こちらが望んでいたとおり実刑を回避し、執行猶予を得ることができた。

論点がむずかしい事件だったとは思う。

裁判員の方々に対するわかりやすい弁論等は今後も課題である。